某月某日某バーにて

重厚そうな木の扉を内側に開くと、そこにはやや急な階段がいきなり現れた。来店前にかなり酩酊していて、ここから落ちた人はいないのだろうかと、なんの役にも立たない心配をする。もしかしたら、自分が落ちるかも知れないという恐怖心があったのかも知れない。


地下に降りて店内に入ると、客は誰もいない。カウンター内に男性が2人。ガタイのよいお兄さんと、ワタシよりも明らかに体重の軽そうな華奢な身体のお兄さん。最初ワタシは、ガタイの良い方をマスターだと思いこんでいたのだが、あとで違うと判明。誰も客がいないと、居心地の悪さを感じる場合があるが(特に、その店が全然イケテなくて、常に閑古鳥が鳴いているような店だった場合、店全体にやばい雰囲気が漂っていて、「失礼しました〜」と言い残して逃げ出したくなったりするのだが)、そのような不安な気持ちには全くならなかった。


カウンターの中のお二人は、非常に話題が豊富で、自慢のオリジナルリキュールのレシピなども教えていただき、実に充実した時間だった。


途中で、マスターがご出勤。そう、このひとが・・・なのね、と酔っぱらった頭でぼんやり考えるが、そんな週刊誌ネタ的な事実よりも、うまい酒が飲めるかどうかの方が重要関心事なのだった。


マンダリンギムレット

シーブリーズウォッカをグレープフルーツリキュールに換えて)



店を辞すときに、マスターの著書を購入。筆でものすごく丁寧にサインをしてくださったのがとても印象的だった。サインといえば、マジックでサラサラと、判読不明なぐちゃぐちゃの線を描くというイメージだったので。