青春の想い出。

今から、30年以上も前のこと、ワタシは毎日電車で1時間半かけて、県庁所在地の街まで毎日通っていた。農村地帯の各駅停車しか停まらない駅と違い、その街の駅には駅ビルがあり、デパートが入っていた。


学校帰りの買い食いは禁じられていたのだが、今思えば割と軽い気持ちで「いけないこと」をするスリルを味わいつつ、育ち盛りの空腹を満たすために、そのデパート内で、実演販売の鯛焼きを買って食べたり(それもビルとビルの隙間の人気のない場所を探して)、デパート2階に出店していた「寿がきや」で、ラーメン(ときには奮発して肉入りラーメン、さらに豪勢にいきたいときにはソフトクリームをプラスして)を食べたりしたものだった。


この「寿がきや」のラーメン、麺は細いストレートで、スープが白濁しており、鰹節の風味がわずかにかおる独特のものだった。当時、だしをとるのに「○び」が使われているというデマがまことしやかに語られていたが、ときおり混ざってくる鰹節の破片が「へ○」の皮のように見えなくもなかったので、ワタシはその噂を信じそうになったが、それでも「寿がきや」のラーメンが好きな気持ちは少しも変わることはなかった。


20年くらい前には、向ヶ丘遊園にあった(今でもあるかどうかは知らない)ダイエーの中に、「寿がきや」が入っており、青春時代を懐かしみつつ、変わらぬ味に感動したものだが、公式ホームページによると、最近では関東地方からは完全に撤退したらしく、名古屋まで行かないと食べられなくなったようだ。


そんなワタシのために、名古屋在住の友人は、上京するときには必ず「寿がきや」製品をおみやげに持ってきてくれる。インスタントの和風とんこつラーメンを食べていると、あの頃が思い出されるとともに、もう一度お店でぜひ食べてみたいという衝動にかられるのだった。


あの頃、買い食いをしている人たちがいると、誰か真面目な人が先生に告げたため、心当たりのある人は名乗り出なさいとホームルームの時間に問われ、正直者のワタシは素直に「やりました」と手を挙げた。その時の罰は職員室前で1時間くらいの正座だったか、それとも正座の罰はなにか別の時のことだったか、よく覚えていないのだけど、その後もラーメン屋通いをやめなかったことだけはよく覚えている。